京都のミステリーはここからが本番である。
実はこの禁断の池に、たった一度だけ公式に調査のメスが入ったという記録
がある。1999年の6月Ⅳ日と8月皿日、京都府が2回に分けて行なった、
たった一度きりの『巨椋池』公式調査がそれである。
京都府は、調査目的を「希少野生生物などの生育生息状況や湖沼生態系の現
況を把握するため」とした。要するに、昭和の初期から完全に外界と隔離状態
にあった純粋なフィールドにどんな生物が生息しているのかを調べたのだ。
研究員は滅多にない聖域の調査に胸を躍らせていた。ほとん
ど手つかずの状態で残っている『巨椋池』こそサンプルの宝庫
に違いないからだ。「淡水貝類の生息状況を重点的に調査」「特
に巨椋池の固有種で全国的にもほぼ絶滅したとされるオグラヌ
マガイの生息をダイバーを使った潜水調査」などの記述が公式記録には残っている。
調査は順調に進んでいった。カメ、カエル、フナ類、貝類、
昆虫などをはじめ、期待通り多種類の生物が発見された。成果は上々だった。
ところが調査を進めるうちに予想に反した生物までもが発見されてしまう。
郷誇瀧漣だった。
ブルーギル、タイリクバラタナゴ、ミシシッピアカミミガメといった本来
『巨椋池』にいるはずのない生物が見つかってしまったのだ。
これはおかしな話である。競馬場歳立以来、完全に外部と繍砺『されてきたは
ずの池に、外来種が入り込むなんて考えられないからだ。原因とすれば、人為
的な放流ぐらいしかない。しかし、ブルーギルやミシシッピアカミミガメなど
を投棄するために、夜中に警備の目をかいくぐって京都競馬場に潜入してくる人などいるのだろうか?
調査は「外部と遮断されている環境として京都競馬場の池を選定した」はず
なのに、皮肉にも「京都競馬場の池が外部と遮断されていなかった」ことを証
明してしまった。報告書にも「タイリクバラタナゴやブルーギルなどが確認さ
れ、必ずしも完全に外部と隔離されているわけではないことが明らかとなった」という記述が残っている。
これで京都の池は、隔離された状態ではないということがハッキリした。
①声外部から誰かが侵入して外来種を放流できるほど警備が甘い。
②三池はどこかで外部とつながっている。
このどちらかだ。
私は、①の可能性は完全に否定できると思っている。
関係者でさえ出入りの厳しい京都の池の周辺に、捨てるため
にブルーギルをビニール袋に入れて持ち込むなどということは
不可能だからだ。つまり、少なくとも可能性があるのは②のほうだといわざるをえない。
京都にずっとあり続けた『巨椋池』はいまでも生きているの
だ。埋め立てられ、上に競馬場がつくられたときも、植物が根
を延ばすようにして、どうにか水脈を外部へとつなげたのだと
思っている。
いつか本当に巨大葱生物が顔を出すことだってあるのかもしれない。
さらに報告書では面白い記述が残されていた。
それは池のなかにいる亀についてである。
亀は普通、水辺周辺の平坦地に産卵するのだが、『巨椋池』の周辺には岸の
ようなものがないため「近くにあるダートコースまで出てきて産卵する可能性が
ある」と報告書は指摘しているのだ。とはいえ、せっかくダートコースに産卵
しても、馬に踏みつけられてしまうのがオチ。馬は気にもしないだろうが、レ
ース中に踏みつけたりしたら騎手だってあまりいい気持ちはしないだろう。そ
れでも池のなかの亀はずっと生き続けているので、きちんと卵は照っているのだろう。
過去の報告例として「ダートコースの八ロー掛けの機械が池から出てきた亀を
巻き込んで故障してしまったことはある」そうだ。さらに、馬が亀を踏みつけ
てしまった事故もあるとのこと。馬が石を踏んで脚をくじくことを『挫石(ざ
せき)』というが、この場合は亀を踏んづけたから璽蓄里とでもいうのだろうか…?